Fumiya Tanaka

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アップデイト

February 13, 2024

過去の記事を加筆、変更しアップデイトしました。

言葉から解放されたい。

組み合わせを考える

October 21, 2016


DJ中次にプレイするバイナルとの組み合わせを考えるのですが、どのバイナルが今求められているのか、フロアの要請、全体の流れを俯瞰で意識し、次にかかるべきレコードの仮説をイメージします。
強さの加減を測り丁度良いコンビネーションをその場で選択するのですが、加減を測るのは効果的な組み合わせを全体の構成に還元しながら、丁度良いテンションをフロアと共有出来る時間を延長していく為です。

日本には昔から少し控えめにしておくという規律に腹八分という言葉がありますが、加減を測るのはこの規律が染み付いているからかもしれません。

話は戻りますが、バイナル同士の相性はあって、Bというバイナルがプレイされる事で、流れに沿ったAしかないだろうという選択がされます。
こういうことを相性といいますが選択されなかったCやDはAと相性が悪いというより後の選択肢として残り続けるだけで、次にかかるべき最善のレコードを選び続ける作業の中の選択肢として残り続けます。

どの組み合わせが浮かび上がるか、イメージし、すくい上げ、仮説は常に立て続けます。
細かく考えているというよりは、今の展開からほんの少し先が見えている・おおまかに想定している感覚で、最終的には決めうちか組み合わせの候補の比較で選曲しています。

どんなバイナルでも組み合わせようと思えば組み合わせてプレイは出来ると思います。
気をてらった選曲はその瞬間は成立しますが、あとの反動は必ずあります。
めちゃくちゃなバイナルの組み合わせでDJがプレイしないのは、不文律があるからです。
不文律に守られていると言えますが、進化のために不文律のアップデイトは必要です。
どうアップデイト出来るか、あるスタイルにだけ共有される不文律がフロアに現れるのがDJのオリジナリティです。

どのようにバイナルを組み合わせるか、どういう順序でバイナルを選択するか、最終的にどんな音楽と時間を集団で共有できるか。
それが個性で、個性は完全にオリジナルかと言えば賛否両論あると思いますが、あるDJとお客さん、その場でしか浮かび上がらない・作れない雰囲気は確かにあり、とんでもない美しい時間や雰囲気が現れる瞬間があります。

順番の小さな違いが結果に大きな影響を与える

September 7, 2016

80枚から150枚近くのバイナルから現場で選曲します。
トラックにはそれぞれキャラクターがありそれぞれ特有のグルーブを持っています。

大きく分けるとリズムの展開をメインに曲を構成するトラック、メロディの展開をメインに曲を構成するトラックとに分けられると思います。
さらに分けるとベースドラムとハイハット、クラップだけのシンプルなものからその他の細かいエレメントが展開するアブストラクトなリズムのもの、スネアやパーカッションが展開するオーガニックなトラック、リズムがメロディの一部となってメロディとのバランスが取れているトラックなどなど言葉にするとキリがありません。

メロディの展開でもシンプルなメジャーコードのものからマイナーコードのもの、複数のメロディが組み合わさったトラックや、メロディであるのか無いのかよく判別出来ないトラックなどなど。

シンセベースが入ってくればベースラインによってグルーブは変わってくるし、サブベースが絡み合ってくれば更にキリがありません。

音色ひとつとってもアナログなものからデジタルなもの、ボイスサンプルやリズム系のサンプル、ピアノやオルガン、ギターやストリングス、音色の違いだけでもキリがありません。

プレイの際にこのようなバイナルの中からどれが良いかを一枚ずつ選曲していくわけですが、例えばリズム主体のAというバイナルが選曲され、その後メロディ主体のBというバイナルを組み合わせた際にその後ベース主体のCを選曲する、というような選択がプレイ中に何度も繰り返されていくのが選曲順で、そのひとつひとつの選曲がプレイ内容全体の構成の出来を左右していきます。

例にあげたAの後にBが選ばれベース主体のCを選曲した場合、別の機会ではAは選曲されず、Aを最初から切り飛ばしてBが先に選ばれる、その後にCではなく別のリズム主体のパーカッシブなトラックDを選ぶという機会があるのが現場で起こることで、その都度選曲の順番を変化することが新たな選曲の組み合わせとして次の展開の順番に影響を及ぼしていきます。

実際はもっと複雑な要素が絡み合って選曲の順番を選択しているのですが、以前に選ばれたバイナルの選曲順や組み合わせに執着することなく、その都度それぞれの現場でしか出来ない順番と選曲にどれだけ向き合えるか、その時の自分のこだわりや先入観をどこまで捨てて順序や組み合わせの変化に柔軟になれるかが鍵です。

最善のレコードを選ぶにはその構えしかなく、同時に仕掛ける構えも必ず必要です。

結果的にはABCDと同じバイナルをプレイしています。
しかし同じバイナルを同じ順番で二つの違う現場でプレイすることは出来ても、通用した現場と別の現場では通用しないのが現場で起こることです。
不思議に感じる人もいますが、場が違うから順番が変わるのは当然であって、場が最優先されます。
順番の変化によって出来る内容の変化は結果に大きく影響を与えるのです。

DJの選曲はお客さんとの共同作業です。
それぞれの現場によってバイナルの順番に工夫を凝らすことは、現場が違うからこそ当たり前の作業です。
そこでしかできない選曲と順番を作っていくことがDJの持っている可能性のひとつで、もし同じ順番でプレイする機会に巡りあったとしても、最初から同じ順番では通じないと考え、別の順序を選ぶ事に積極的に取り組む構えが大切です。
しかしながら違う順番に拘りすぎるのも注意が必要で、何度も書きますが常に今、その場が最優先されなければならないのです。

テンポを合わせる

July 31, 2016

DJに必要な技術は沢山ありますが、基本的な技術のひとつにミックスの際にテンポを合わせる、というのがあります。
DJを始めた頃はとにかくテンポを合わすのが楽しかったのです。

テンポが合わせられそうなバイナルは片っ端からミックスをし、テンポだけを判断基準に次のバイナルを選択していた時期があるぐらい夢中でした。
ほとんど病気ですね。

テンポを合わせてミックスをしている間は楽しくて仕方が無かったし、テンポが合うかというだけでバイナル選び、ミックスによっては思いもよらないバイナルの組み合わせに価値を見出し、ミックスによっては音楽が単体とは違う音になることの面白さに取り憑かれていきました。

同じテンポで組み合わせられるかはもちろん、ハーフテンポで組み合わせられるか、3/4のテンポで組み合わせられるか、ウワモノや声モノ、SEとして組み合わせられるか、ミックスのタイミングを変え同じ曲を2枚同時に組み合わせられるか、などなど好奇心は尽きなかったのです。

当たり前のようにジャンルに拘らずいろんな音楽を好奇心に任せ聞きあさり、ジャンルを問わず片っ端からバイナルを購入していました。

バイナルのテンポはバイナルを購入する際の判断基準の一つですが、テンポが合う・合わないで結果的に音楽の構造やルールを自然に吸収している実感もありました。

無茶苦茶な発想をして無謀なアイデアを試していたのもこの時期ですが、レコードの組み合わせの少しの違いが大きな違いを作り出すことが分かるようになってきたのはその後からでした。

当たりをつける

June 30, 2016

バイナルケースの中にあるバイナルを1枚ずつ見て選曲するわけではありません。
それではどうやってプレイをしているのか?
どのレコードがどこにあるのか、ある程度当たりをつけている場所から決めうちで選曲しているのです。

当たりをつける場所とは大まかにまとめたグループの中からさらに大まかに区別している場所のことで、その作業自体はプレイ直前に現場で行います。
大体プレイが始まる15分ぐらい前から始めるのですが、そのことで集中力も同時に高まっていきます。
この時点で構想通りになるのか、ある程度モデルチェンジをするのか、予定していたアイデアをどうするかなど大体の方針を固めますが、この時にいくつかの組み合わせや全体のおおまかな組み立ても同時にイメージします。
ただ実際は始まって見ないとよく分からないので何も決めず、交代前のDJの前後の流れに気を配りながら、交代前のDJが最後にプレイしたレコードを聞いて初めて決めていきます。
どこにどのレコードがあるのか、プレイが始まるまでは同時にそれを頭に叩き込む作業にも集中します。

構想は念頭に置いて、でもそれに拘り過ぎず、次にかかるべきバイナルが何かを選択することに集中します。
この時頼りになるのは構想と直感で、迷いなく選曲出来る時もあれば、2、3枚のレコードを比較対象にする時もあります。
最初に浮かび上がったバイナルが選曲されることが多いですが、

DJを始めた頃はバイナルケースの中にあるバイナルを一枚ずつ見て選曲していました。
自分の構想に拘り片っぱしから手当たり次第プレイする、というようなスタイルです。
しかしそのスタイルでは日本では通用しても世界では通用しないことが段々分かってきました。
世界の文脈で自分の音楽をプレゼント出来ておらず、荒削りで穴だらけのDJだったのです。

今思えばDJを始めた頃のプレイは勢いに任せたプレイでした。
日本でしかプレイしたことがなかったことや、若さ故無知な部分が多かったのです。
しかしながら若さ特有の跳躍的な発想は、時にありえない組み合わせを可能にしたり、無知が故好奇心だけで無謀とも言えるところに躊躇なく手を伸ばしたり、怖いもの知らずで手当たり次第にいろんなことに挑戦できていたのです。。
それは若さの特権でもあるけど、残念ながらそれは永久には続きません。
人は必ず老いていくのでどこかで必ず壁にぶち当たります。
今では考えられない幅広いジャンルの音楽を一晩で選曲したり、見よう見まねであり得ない組み合わせの音楽を作ろうとしたり、そういう活動を通して今のスタイルのベースを意識的に無意識的に確立していったのです。

世界で通用するためには自分の拘りを進化させ、世界で意味のあるものにアップデートしていく必要があります。
若い時にしか出来ないDJがあるように、私のような年齢でしか出来ないDJがあります。
大まかにまとめ、当たりをつけ、即興で選曲するDJの面白みに取り憑かれているのは、手当たり次第に手を伸ばし平気でジャンルを横断した若い頃の蓄積が肥やしになっているのは間違いありません。